Lens Kyoshitsu Top
 素人レンズ教室 第九回 「Rapid Plasmatを作っちゃおう」


先生 ; 皆さんおはよう。あら、みんなパソコンの周りに集まって何をやっているの?
はるか ; 先生、ジローが学校でゲームみたいなものやってまーす。
先生 ;
こら! ジロー!
ジロー ; 先生、違うよ。これは
「OPT98」といって、立派なレンズの勉強のためのソフトですよ。先生知らないんですか?
先生 ; そ、そんなものよく知っているに決まっているじゃない(あら、これってこの間ネットで見た、レンズ設計のシミュレーションソフトだわ。
         どんな風に操作するんだったかしら、よく思い出せないわ。)
      ちょっ、ちょっと見せてご覧なさい。
ジロー ; 僕も昨日届いたばかりだからぜんぜん使い方判らないんですよ。先生、よく知っているのなら、教えてよ。
先生 ; 待ちなさいったら。
      これが、初期画面ね。


 


はるか ; 先生、早く動かして見せてください。
先生 ; はいはい、はるかちゃん、そんなに急かさないでね。
        (う〜ん、実物は初めて見たわ、でもWINDOWSのソフトってだいたい操作感は似ているし、たしかネットではこんな手順だったような、、、、。)
先生 ; ファイル → 新規作成 っと。
   ほら出た、これが初期データの入力画面よ。

 

ジロー ; ここに作りたいレンズのデータを入れていくの??
先生 ; そうよ。
はるか ; 「R」とか、「間隔」ってなんですか??
先生 ; 「R」はレンズの曲率半径でしょ。「間隔」っていうのはきっとレンズ軸面からレンズ軸面の間の距離ね。
はるか ; 難しそう。何をどう入力していいのか、まったくわかりません。
先生 ; そうねえ。
         わかったわ。初めから自分自身で初期データを作ることなどはできないから、過去実際にあったレンズで試してみましょうよ。
         ちょうど、前回の教室で登場した、有名な
Dr. Paul Rudolphの設計したレンズのデータがあるからそれを使ってみましょう。
         Dr. Paul Rudolphはみんな覚えているわね?
ジロー ; 知ってますよ。テッサーとかプラナーとか、プラズマートとか作った人でしょ。
先生 ; そうよ。よく覚えていたわね。
        そのルドルフ博士が、設計はしてみたけれど、実際は作られなかった貴重なレンズのデータを今日持ってきましたよ。
    そのデータでソフトの勉強も一緒にしてしまいましょう。さあ、これよ。


 


はるか ; わー、すごい。ガラスの大きなレンズですね。
先生 ; そうね。実際製造されていたら、結構な重さだったでしょうね。
ジロー ; なんというレンズなんですか?
先生 ; 特に正式な名前はないみたいだけど、このレンズは明るさが
f1.0という超高速レンズなので、人によっては「Rapid Plasmat」と呼んでいるようね。
      これは米国の特許庁に登録されたデータだけど、次のページを見て御覧なさい。ほら、rとか、dとか、レンズの屈折率や分散のデータも書いてあるでしょう。
はるか ; これを、さっきの表に入力してみれば良いのね。はるか、入力係やりま〜す。  

    ・・・・・・・

    先生、ソフトのレンズ一覧の中に分散のデータがないんですけど?


 

先生 ; どれどれ?本当ね。
         そう、当たり前よ、こっちは光線ごとの屈折率が書いてあるじゃないの。
    分散はそこから計算できるのよ。でも特許に記載されているデータと全く一致するものを見つけるのは難しいわね。
        じゃあ、こうしましょう。ちょっとショット社のHPを開いてみて。
    そこに現在生産しているレンズのデータ表が載っているから、そこからルドルフ博士が使おうとしたものと数値のもっとも近いものを使って見ましょう。
はるか ; 先生、このページですか?
先生 ; そうこれね。


 

はるか ; 物凄くたくさんのレンズが載ってるわ。
            え〜っと、この中から数値の近いレンズを見つけて、OPT98ソフトのレンズ一覧にあるかどうか確かめて、、、と。

・・・・・・・・

はるか ; 先生、とりあえず入れました。これでどうですか?


 

先生  ;あら、早いのね。さすがはるかちゃんは優等生だけあるわね。
     まあ、ずいぶんいろいろなガラス使っているのね。
     LAKって、ランタンクラウンガラスなんてルドルフ博士の時代にあったかしら?
はるか ; だって、ショット社のデータみても、屈折率と分散がぴったりなレンズがないんですもの。
            だから、はるか流に少し屈折率が高いレンズや、分散が低いレンズを組み合わせてみたんです。
先生 ; わかったわ。はるかちゃんを信用するわね。
      じゃあ、まず
「描画」ボタンを押して、どんな形のレンズになったか見てみましょうね。
はるか ; はい。


 

ジロー ; うわぁ、さっきの絵をそっくりじゃない。
はるか ; でもレンズの面取りみたいなものは出来てないわ。
先生 ; そういう機能があるのかしら?良くわからないわね。まあ今回は省略して先に進みましょう。
       じゃあ、次は計算結果だわね。焦点距離とか、F値とかが想定どおりにできているか検証してみましょうね。


 

ジロー ; 焦点距離は約100mmなんだね。F値は1.065で少し特許のf1.0には足りないみたい。
先生 ; もう少し屈折率の高いレンズにすればF値は上ると思うけど、適当なものがあるかしら。
はるか ; さっき第3レンズをSK18からLAK12に変えてみましたけど、今度は収差が大きくなりすぎてダメみたいでした。
先生 ; そうね、今回はこの程度は誤差としましょう。像距離が48.229mmということは、バックフォーカスはほとんどのカメラで大丈夫そうね。
ジロー ; ところで、このレンズ本当にピントが合うんですか?
先生 ; じゃあ、このソフトでは
光線が図示できるみたいだから、見てみようね。
はるか ; え〜っと、さっきのレンズ図の「描画開始」ボタンね。


 

ジロー ; おわっ。
はるか ;
わーすごい。見事に一点に集まってる。さすがプロの設計ねえ。
先生 ; 確かにきれいね。でもレンズ設計は精密じゃないといけないから、この程度の縮尺じゃわからないわよ。
         焦点部分をもっと拡大してみて。
はるか ; はい。


 

先生 ; まあまあの集光状態のようね。でも最も外側の光はかなりはずれてるから、周辺はかなり滲みそうな気がするわ。
ジロー ; 先生次は何をしたらいいの?
先生 ; じゃあ、次は直接収差を見てみましょうね。まずは球面収差グラフを出してみることができる?
はるか ; たしか、始めの画面にボタンがあったと思います。ああ、これこれ。


 

先生 ; きれいな球面収差曲線が出たわね。
         このくらいのカーブだとまだ結構滲みが出ると思うけれど、周辺部分でかなり無理やりに補正される形なので、ピント部分は思ったよりシャープかもしれないわ。
        でも2線ボケもかなり出てきそうね。
はるか ; さっき、レンズを入れ替えてみたときは、F値は上ったけど、この球面収差は全く収束しなくなってしまったんです。
先生 ; 収差はコンマ何ミリの世界だから、このくらいのカーブになれば初めての実習としては順調な方だと思うわ。

          ( キ ン コ ー ン カ ン コ ー ン)

先生 ; もう休み時間ね。でも最後にコマ収差とスポットダイアグラム出しておきましょう。はるかちゃん、このボタンお願い。
はるか ; はい。これがコマ収差ですね。


 

先生;中央はまあまあだけど、周辺はあさっての方角向いているわね。結構「長い尾の彗星」が見られるかもしれないわ。
       じゃあ次はスポットダイアグラムをお願い。


 

先生 ; あらあら、これは散らばっているわね。これだと市販のシャープなレンズとしては使えないわね。
         まだソフトレンズといった感じかしら。
         はるかちゃん、スケールを少し大きくして、0.02から0.1にしてくれる。
はるか ; はい。


 

先生 ; さっきのスケールでこのくらい光が集まってくれれば良いのだけれど。
     まあ、今日はこんなところね。みんなご苦労様でした。じゃあ外で元気に遊んでいらっしゃい。
     あ、それからOPT98のソフトは
コピーしちゃだめよ。欲しい人は一人ひとり買いなさいね。購入場所はネットで直ぐに検索できるからね。

ジロー、はるか、みんな ; はーい。



                                                         

第九回 素人レンズ教室 おわり。